世界を革命するブログにゃー。

パイナップルについて研究に研究を重ねています。

「UFO」

UFOは存在するのか、しないのかとよくちまたで議論されているが、

もし私がそのように質問されたとして、イエスかノーで答えるとするのであれば、私は

「どちらとも言えない」と答えるだろう。

 

私は幼少時代(といっても、二十歳も後半の頃だが)、よく実家の近くの公園で一人ブランコに座り揺られていることが多かった。別に仕事がないというわけではないが、特に働く場所も見つからなかったので、途方に暮れていたというのが正解だろう。

私は雲を眺めるのが好きだった。だって、雲はいろんな形に変化するから「今日はハンバーグだ、あっ、今日はスパゲティだ、おっ、そう思ったら牛乳パンだったか」なんて、腹をぐーぐー空かせながら妄想にふけっていたものだ。

ある平日の、あれは空気の澄んだ12月も末のことだった。その日も私は佐世保市の第四公園に足を運び、左端のブランコによいしょと腰をかけるのであった。腹はついさきほど道端に転がっていたじゃがいもを頬張ったので、だいぶ泣き虫の私のお腹もおとなしくなったところだ。

「今日は食後のデザートといこうかな」

私はいつものように真っ青な空に浮かぶ雲に目をやった。「おっ、あれは昆布やな。あっちのほうはあぶら取り紙か。なかなかデザートは見つからんな」。そんなことをつぶやきながら、30分、40分くらい雲を眺めていただろうか。そのうち、うとうとと眠気が襲いだし、私はブランコから立ち上がると、その公園の中心にあるタコの形をした遊具に向かった。割と大きなタコの遊具で、中には空洞があり、ちょうど大人の私がすっぽり隠れることができたのだ。私はその中に入り、「おやすみなさい」と一人つぶやいてから、ゆっくり目を閉じるのであった。

何時間寝たかな。腹が満たされていたからか、どうやらけっこう長い時間熟睡してしまったようだ。目ヤニのついた目をこすり、辺りをを見回すとそこは一面が灰色の世界が広がっていた。

「目がおかしくなったかな」

何度も目をこすったが、やはり私の周り、上も下も全てが灰色、いや銀色に光った鉄のようなものに囲まれていたのだ。はっとした私はすぐさま飛び起き、その空間の壁に手をやった。なんの模様もない、完全な平面の、四方を囲まれた部屋だ。私は一瞬気がおかしくなりそうな感覚に襲われたので、一度大きく深呼吸をした。

「飯は食ったか?」

突然私の目の前から声がすると思ったら、目の前にはカブトムシがいたのだ。だが、このカブトムシは私の背丈、いや私以上に大きく、二本の足ですっくと私の前に立っていたのだ。

「えぃよぉー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

私は生まれてこのかた、出したこともない奇声を発したと同時に、目の前にいるカブトムシ(以降Kと呼ぶ)の股間を思い切り蹴り上げたのだ。その行動はまさに脳が判断したというより、体が危険を察知し反応したという感じだった。私の蹴りは見事にKの股間部を直撃し、何かが破裂し液体が飛び散った。

「ぴぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

やかんでお湯が沸かしたときのような、変な声(音?)をKはけたたましく発した。私は攻撃の手をゆるめなかった。私の前でうずくまるKの顔面をノンステップで思い切り蹴り上げたのだ。すると驚いたことに頭部はもげて、部屋の奥の壁にぶち当たるまで飛んでいったのだ。頭部のないKは微動だにせず、ただ私の前に転がっていた。私の体はガタガタと震えていたが、すぐさま出口がないかと部屋の壁面を見て回った。やはり出口らしきものは見当たらないので私は思い切り壁を蹴ってみた。するとびっくりするど簡単に壁は破れ、私がもっともほしかった景色が姿を現した。私はそこから外に出るとすぐ気づいたのはそこは私が昼寝をしていた公園で、すぐそばにはタコの遊具もあった。私は走って公園の外に向かい、そして振り返ってみたときには、そこには何もなく、あるのは私のよく知る公園が広がっているだけで、いったいこれはどういうことなんだと私は自分の体を見た。

「なんやこれ!」

私は自分の下半身がべっちゃべちゃに濡れていることに気が付いた。色は無色のようで、特にべたつくこともなかった。ただ、とにかく異様なにおいが立ち込めた。そのにおいを例えるとするならば、ハムにひよこ豆を細かくすりつぶしてまぶしたような、そんなふくよかなにおいがするっちゃねん。わいはめったなことでは笑わへんのやけど、このときばっかりは腹かかえて笑ったね。ちなみに家帰ってズボン洗ったけどそのにおいは何度洗ってもとれへんかったね。まぁそういうこっちゃ。

「ペーストマウンテン」

ペーストマウンテン。

世界の猛者どもがその響きに酔いしれ、今宵もアバロン(ペースト棒)を振るう。

まだ日本には馴染みのない言葉だが、欧米をはじめ、世界各国で今爆発的な広がりを見せている土木建築様式なのだ。

雪に日にはアナグマが住まい、落ち葉散る季節にはピーナッツが畑で取れる、和洋折衷を取り入れたこの建築様式は19世紀の終わり頃にヨーロッパからベトナムを渡り、そして日本へと伝わった。

当時の日本は江戸中期で、園芸様式が主流となっていたが、ペーストマウンテンは瞬く間に農民から商人に広がり、そして武家にまでその様式は浸透した。

ペーストマウンテンの最大の特徴は入り口上部にコマイヌを二体設置し、そしてお互いを向き合すことで魔除けとしていたが、その様式は徐々に衰退を見せ、20世紀の前半にはコマイヌはLEDのペンライトに代わり、入り口玄関を囲むようになった。

また基本的には木造で作られるが、その細部にはバナナの皮が使用され、日が差し込むことでバナナの皮の変色を楽しむことができ、かの有名な葛飾北斎もその情景を風景画として残している。

先日、私の友人がペーストマウンテンである生家を私に売却したいと連絡をよこしてきた。私はぜひとも購入したいと、小切手3000万円分を早々に準備し、友人の生家へと出向いて行ったのだ。友人は小切手を受け取るなり、私のはげかけた頭部を見てこう言った。

「お前には世話んなったな」

友人(以降はK(加藤のK)と呼ぶ)は気性がはげしく、あばら骨の数本が折れていようが木登りをやめない、そんなやんちゃな性格を私は誰より知っていたつもりだった。ついこの間も地下アイドルのライブをKと一緒に観戦したのだが、その時の風貌ときたら、髪の毛は天にまで届くかというぐらい逆立っており、服装は桃色一色で、「はば、ないすでい!」と西洋かぶれな言の葉を何度も連呼していたものだ。だが今、私の前にいるKは5月の突然の雨に打たれ、ひどく弱ったすずめのように服装は茶色でまとめられており、何よりKのポリシーであった長髪は、頭頂部に少しの毛髪を残すのみというありさまだ。とにかく、Kのその突然の変貌に私はしばらく面食らってしまったが、一口茶をすすり気を落ち着かせると、Kにこう問いかけた。

「何を言う。お前はこうして立派にマウンテンを先祖から受け継ぎ守ってきたでないか。これは誇るべきことだぞ。だが、どうしてまたこんな立派なマウンテンボス(アバロン付き)を私に譲ろうと思ったのかね?」

Kはポッケからくしゃくしゃのタバコの箱を取り出し、やっとこさ一本の煙草をひねり出すと、それをくわえるなり、火も点けずに語りだした。

「俺も年とったからさ。たまには誰かのためになることもしてみたくなったのよ。お前がずっとペスマン追いかけてんの知ってたからさ。もうこのマウンテン(エチュード)は俺にはなびかねえんだ。ずっと、枯れたままなのさ。悲しいことにさ」

友人は無数のバナナの皮で覆われた吹き抜け天井をじっと見上げていた。

夕暮れの光が黒く染まったバナナの皮をより黒く浮かび上がらせていた。

私はその、しんと静まり返った空気に少々居心地の悪さを感じ、いささか場に似つかわしくないが、とっさにこんなことをKに問いかけた。

「今年の紅白は、和田アキ子は出るんかね?」

そう言うと彼ははっとしたように目玉を大きくさせ、8秒ほど私の頭頂部をじっと見ておった。それから彼は小さな声で何かをぼそぼそとつぶやきだした。何を言っているかはわからなかったが、短い単語を何度も何度も繰り返しつぶやいているようだった。またひどく怯えた様子で、どこか自分自身を励ますような、そんな感じに私には見えた。Kの挙動は徐々に異常さを増し、両手の指を交互に舐めたり(少し、いやだいぶ左手の指を長い時間舐めているようだった)、はっと立ち上がっては、ひょいひょいと小刻みに飛び跳ねたり。または、床にどべぇと寝そべっては、ぴくりとも動かんようになったり、私はそんな様子を怖く感じながらも、どこかで楽しんで見ていた。

「アページの、とぺしてきます!」

と言ったと思う。Kは突然そう叫ぶと、そそくさとその場を小刻みに飛び跳ねながら離れてしまったのだ。

何かKの気に障るようなことでも言ったかな、次に訪ねる時にはKの好きな浜田屋のペーストまんじゅうでも土産として買ってやるかな。そんなことを考えながら、Kが床に落とした火も点けずにくわえていた煙草を拾うと、それをくわえ、やはりバナナの皮で敷き詰められた吹き抜け天井を見上げるのであった。

すると何か黒い影がふと夕暮れの光を遮ったのだ。

なんだ、カラスでもいるのか?

私の視力は右目0.1、左目0.01しかなく、はっきりとその何かを捉えることができなかったので、胸ポケットに忍ばせていた老眼鏡を取り出し、両方が耳にかけて再度その物を凝視してみたのだ。

あれっ?

「お前、何をやっているんだね?」

私は大の声を上げた。Kが天の井に両手両足をうまくバナナの皮にからませ、まるで洋画で見たスパイダーマンかのごとく、天の井に張り付ているではないか。

Kは大量の汗と微量の尿を天の井から降らし、大きく息を切らしながらこう言った。

「今朝、お前さん言ったよな、この家がすげー高値で売れるって。それでさ、俺はピンとひらめいちゃったのよ。この家を売って、マカオにでも行って一攫千金狙っちまおうかって。でもさ、俺ぁ、気付いちまったんだよ。俺パスポートないじゃん。海外とかいけねーじゃんって。なんかさ、そんなこと考えてたらさ、突然自分がみじめに思えちゃってさ、もう生きてたくなんかねえんだよ!だからさ、もう終わらせてやるんだよ。この家もろともな!」

Kはそう言うとせきをきったかのように大量の小便を放出させた。天の井から降り注ぐKの生きた結晶とも言うべき小便は消え入りそうなオレンジ色の斜陽に照らされ、私を暖かく、そして慈悲深く包み込んだ。あたりまえに生きてきた人間があたりまえでなくなるその狂気たる瞬間を、私は今まさに身をもって感じているのであった。