世界を革命するブログにゃー。

パイナップルについて研究に研究を重ねています。

「油売りの少女」

雪がちらほらと降る中、一人の少女がコップ一杯の油を売っている。

もう師走が近づいているせいか、通りすがる人々に足を止める者はいない。

少女は素足で体をぶるぶる震わせながら

「油はいかがかね~、甘くてちょびっとだけ酸っぱい油はいかがかね~、乾物や納豆に少し混ぜるだけで蜂蜜のように甘くなりおすよぉ~、丹波名産黒豆から抽出した絶品食物油でっせ~、いかがか~~」

と今にも消え入りそうな声で街の人々に声をかけている。

だが街の人々はまるで汚物でも見るかのような冷たい目を少女に向けるばかりだった。

彼女はひとしきり街の人々に声をかけたところで、

「はふぅ、やっぱり今日はだめだわ。いかんせん、この雪では油もすっかり冷えてしまうえ」

とため息まじりにつぶやくと、そそくさと歩き出し、近くの公園に入りベンチに腰をかけた。

この公園は少女が数か月前から寝床としており、閑静な住宅街の中になった。

少女は古ぼけたウールの上着のポッケから、この公園で今朝がた拾ったたばこの吸い殻を取り出すとそれを口にくわえ、ユニクロで買ったヒートテックのズボンのポッケからライターをさっと取り出すと、慣れた手つきでシケモクに火を点け、それをうまそうにぷかぷかとふかし始めた。

「嬢ちゃんはもう立派な玄人(バイニン)やね」

ベンチでほっこりしていた少女に身の丈4メートルはあろうかという大男が突然後ろから声をかけた。服装は上半身は裸で下半身にはレッグウォーマーといういでたちだ。髪はハリーポッターに出てくるハグリットのように毛むくじゃらだった。

少女はベンチに座ったまま体をひねり、そして体をのけ反らることでやっと大男の顔を見ることができた。少女はそんな大男にひるむことなく凛としたまなざしで大男に言った。

「あなたはどこのどなた様ですかえ?ここは八百万(やおよろず)の神々が疲れと汚れを落としにやってくる油屋ですえ」

「わしは、、、そうだな、浪速のベートーヴェン、、、とでも名乗っておこうかの」

大男は満面の笑みを浮かべていたが、なぜか目は笑っていなかった。その目の奥に少女は亡き父アンドラゴラス王の面影を見ていた。少女は少しの興味をかきたてられ、続けて大男に話しかけた。

「はぁ、そうですか。それでその浪速のベートーヴェンさんが私に何用ですか?シケモクならもう手持ちはありませんぜ。見てのとおり私は名もない番頭です。この油屋で湯婆婆に名前を奪われた日から私はうんこ同然の存在なのです」

「そうですか、それは難儀でしたね。いやね、わしがあんたに声をかけたのはあんたのその美声をほめたくてなんじゃよ。さっき街中で腐った油を売っておったじゃろ、あのソプラノボイスはなかなかのもんやったぞえ。どうじゃ、わしのところに来んか、それで歌手を目指さんか?」

突然の問いかけに少女は目を丸くしながらも

「油、買ってくれるならかまわんけどね」と即答するのであった。

それから2年後、ある大男と少女による二人組ダンスユニット「JK」によるデュエット曲「ソーラン節エトセトラversion2015」が日本中で大人気となり、ユーチューブで再生回数が5億回を突破するという偉業を成し遂げたことは想像に難くない。またそのCDのカップリング曲「アリゾナの憂鬱」がMr.Childrenの「抱きしめたい」の歌詞を一語一句相違なくパクっちゃったことでその人気を不動のものとした、というお話。